経営事項審査の虚偽申請
虚偽申請防止対策の強化
平成23年1月1日から施行されている「虚偽申請防止対策の強化」については、大きく次の3点を柱とした対策強化が図られています。
1. 経営状況分析機関が行う疑義項目チェックの再構築
経営状況分析機関が実施している異常値確認のための疑義項目チェックについて、倒産企業や処分企業の最新の財務データを用いて、指標や基準値の見直しが行われました。
異常値の程度や疑義項目の詳細は、事柄の性質上非公開となっていますが、概ね次の点に注意する必要があると考えられます。
なお、このような時は、勘定科目内訳書等の提示が求められ具体的な内容が問われることになります。
- 各勘定科目の数値について、前年度と今年度の差が大きいとき。(増加の場合も減少の場合も理由を問われることがあります。)
- 未成工事支出金及び未成工事受入金が多額なとき。
- 各利益額の増減が極端に繰り越されているとき。
- 経常外損益又は特別損益が相対的に大きいとき。
- 雑収益又は雑損失が相対的に大きいとき。
2. 審査行政庁が行う相関分析の見直し・強化
完成工事高と技術職員数値の相関分析について、最新のデータに基づいて基準値の修正が行われています。
技術職員数に比べて完成工事高が極端に大きい場合は(完成工事高水増し・一括下請負違反の疑い)、従来から疑義チェックの対象となっていましたが、完成工事高に比べて技術職員の数値が極端に大きい場合(技術職員の水増しの疑い)も疑義チェックの対象となりました。
なお、完成工事高と技術職員数の相関関係などに関して、どの程度の数値であれば疑義チェックを受けるかについては非公開となっています。
以下に疑義チェックの項目を記載しましたので、万一、これらに該当する場合は、早急に改め、又は合理的に説明ができるようにする必要があります。
- 「虚偽申請」に関する情報のある業者
- 技術者1人当たりの完成工事高が過大で、完成工事高水増しの可能性のある業者
- 完成工事高評点(X1)の増加や減少が急激な業者
- 総資本回転率(売上高/総資本×100)の高い業者
- 経営状況評点(Y)の伸び率が急激かつ一定以上の業者
- 経営状況の審査で、疑義項目の数が多い業者
- 技術職員数評点(Z)の伸び率と人件費の伸び率がアンバランスな業者
- 外注費の割合が高い業者
- 消費税確定申告書の課税標準額より売上高の額が大きい業者
- 税務署が公示しているデータと経営事項審査のデータに食い違いがある業者
3. 審査行政庁と経営状況分析機関との連携強化
審査行政庁では、経営状況分析機関から異常値が検出された業者の情報提供を受けて、重点審査対象企業の選定を行うことになります。
重点審査対象企業に選ばれてしまった場合、証拠書類の追加徴収や原本確認(工事請負契約書、領収証や入金状況が分かる通帳など)・対面審査・立入検査などが実施されることになります。
虚偽申請による営業停止期間
現行の経営規模等評価申請は、虚偽申請が行いにくいよう制度設計がなされています。
また、経営事項審査の虚偽申請が発覚した場合の営業停止期間は、これまで15日以上であったものが30日以上と倍増されました。
その他の審査項目では、「監査の受審状況」で加点措置を受けたにも関わらず、財務諸表などの虚偽申請が発覚した場合の営業停止期間は、30日以上から45日以上に加重されています。
なお、この場合、翌期の経営事項審査でも「法令遵守の状況」で減点措置を受けることとなるため、虚偽申請の影響は深刻なものになります。